作品概要
《洗礼者ヨハネ》は、画家のジュリオ・カンパニョーラによって制作された作品。制作年は1505?年から1510?年で、国立西洋美術館に所蔵されている。

作品
建物や自然、人々を背に立つ洗礼者ヨハネが描かれている。作者ジュリオ・カンパニョーラの作品の中で一番大きい。
作成
洗礼者ヨハネの姿をアンドレア・マンテーニャ(1431-1506)のドローイング(現存しない)からカンパニョーラがアレンジし、また風景を近しく活動をしていたジョルジョーネ(1477/78-1510)が、同時期に提供したと広く認められている。
パリのルーブル美術館には、ジョルジョーネのペン画が収蔵されており、その風景画が《洗礼者ヨハネ》の風景部分の裏返しであることから、《洗礼者ヨハネ》の版画の元になったと言われている。ジョルジョーネは人物を描くための空間を残して風景画を作成し、その一方で、カンパニョーラはあらかじめ、マンテーニャの図案を元に、人物像を版刻したと見られているのだ。
技法
カンパニョーラは、グラデーションをつけるため、スティップル法(点刻彫版法)を編み出した。彫刻では基本的に線描が使われるが、多数の細かい点や線を用いることで、滑らかなグラデーションをつけられるようになり、これにより以降の版画作成に非常に大きな発明となった。
作者
カンパニョーラは、ベネチアの画家、特にジョルジョーネが描いた風景に近いものを版画で表していたが、その作品は単に風景を思い起こさせるだけではない。様々な分野を学んだカンパニョーラは、細密画などの美術だけでなく、音楽(彼自身、リュート奏者で歌手であった)や、その時代の人文学的な考え方(文学、詩、ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語)にも精通していた。
生まれた地パドヴァや育った地ヴェニスで、ヒューマニストの集まりによく顔を出しており、積極的に人文学に関わり、アルカディア(理想的田園)というテーマは、他の芸術家たちが作り出したモチーフの真似や知識人たちに好まれるような見せかけであったと言うよりも、新しい何かを創作するベースとなるアイデアであった。
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