作品概要
《書斎の聖ジェローム》は、画家のロレンツォ・モナコによって制作された作品。制作年は1420年で、アムステルダム国立美術館に所蔵されている。

1400年頃、シエナ人のロレンツォ・モナコは、フィレンツェでも最も盛んな作業場の1つを所有していた。彼は本の挿絵や祭壇画を作成していて、そのいくつかは彼の所属していた男子修道会のために描かれた。ロレンツォの全作品は、フィレンツェの後期トレチェント様式から、一般的に国際ゴシック様式と言われる優雅な絵画のスタイル進化をより表していて、それは人物の衣服が流れるような線から特徴づけられている。国際ゴシックの他の画家とは違い、彼には堂々とした人物構成を描く、持って生まれた才能があった。
ロレンツォの聖ジェロームは、《聖母子》の対となる、二部作の一部を構成している。二部作のサイズの小さなものではあるが、描かれた人物は作品を支配している。より注目すべきは聖人とライオンと書斎を一枚の説得力のある画として組み合わせることに成功している点である。聖ジェロームは奇跡を起こした偉大な牧師ではなく、信仰のため拷問に苦しんで亡くなったわけでもない。聖書をギリシャ語と古代ヘブライ語からラテン語に訳したことで聖人としての地位を手に入れた。それによりロレンツォは彼が書斎にいる姿を描いたのだ。書見台には棚が2つあり、1つは翻訳する本が立てかけてあり、もうひとつには翻訳したものが置かれている。聖ジェロームは、当時の枢機卿の場所はわかっていないが、教父の序列として、また枢機卿として二番目に位置していていた。このような立場で通常彼は描かれるが、ロレンツォは修道士として彼を描くことを好んだ。ジェロームの赤い枢機卿の帽子は右側の書見台の後ろにかけられているのが少しだけ確認できる。
4世紀に聖書をラテン語に翻訳した聖ジェロームは、四人の教父の中で最も博学であったと言われている。彼は一流の学者だったが、その後世捨て人としてシリア砂漠に自らを投じた。そこで彼はライオンの足からとげを抜いたことで親しくなる。彼はよく、彼の忠実で感謝を伝えるライオンと、枢機卿の帽子と共に、年老いた男として描かれる。
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