作品概要
《大いなる変容》は、画家のイヴ・タンギーによって制作された作品。制作年は1942年から1942年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

《大いなる変容》はフランスの画家イヴ・タンギーによって1942年に制作された水彩画である。ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。
画風の変化
第二次世界大戦(1939年から1945年までの6年間にわたる)の勃発にともない、アメリカに亡命した後の1940年代の作品では、色彩が一層明るく鮮やかになり、また画面空間に対して不定形の物体群が占める割合がしばしば大きくなり、結果として物体群の巨大化あるいは空間の巨大化といった印象をもたらすものとなっている。
タンギーは自分の絵の変化についてこのように述べている。
「合衆国に来てから私の絵のなかに起こったと気づくただひとつの変化は、たぶん、パレットの変化である。どうして色調がこのように強くなったのか。わからない。ただ、ここにはひとつの大きな変化があると思いあたる。たぶん、光のせいなのだろう。それに空間が広くなったという感じもある。ここでは空間を広くつくれる。だから私はここに来た」。
巨大な物体
本作《大いなる変容》で、目を引くのは白く巨大な物体である。本作は水彩画であるが、重厚感を感じさせる作品となっている。物体のフォルムはシャープで明確であり、1930年代の作品に比して物体群は巨大化し、本作《大いなる変容》においては特に大きい印象を受ける。1940年代半ばのタンギーの作品でしばしば見られるシュルレアリスムのコラージュ技術を使用したものとも考えられる。
白い人体のような硬質なオブジェはデ・キリコを思い起こさせる作品となっている。
デ・キリコのイメージに出会い画家となったタンギーは、デ・キリコの謎を純粋な形で自己増殖させ、イメージの領域を極限化させた。タンギーのイメージに関して、デ・キリコによれば、形而上絵画の革新性はショーペンハウアーとニーチェの示した「生の無意味」を絵画に応用したことにある。生の無意味の認識は、事物同士を結びつける関係性の網の目を崩壊させる。
自らが属すべきコンテクストを失った事物は、デ・キリコが言うところの「記号の孤独の状態」に陥る。事物は究極的なシニフィエ(意味されているもの)を失ったシニフィアン(意味しているもの)となり、謎となる。事物は自らと交換されるべき言葉を失い、沈黙する。
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