作品概要
《青い午後》は、画家のイヴ・タンギーによって制作された作品。制作年は1937年から1937年で、テート・モダンに所蔵されている。

《青い午後》はフランスの画家イヴ・タンギーによって1937年に制作された油彩画である。テート・モダンに所蔵されている。
イメージ基本構造の確立
1920年代後半に、タンギーのイメージの基本構造が確立し、以後タンギーは、茫漠とした空間に蠢く不定形の物体群をひたすら描きつづけることになる。
1930年にタンギーは妻のジャネットと共にアフリカを訪れている。旅程などくわしいことは解っていないが、タンギーの兄フェリックスが第一次世界大戦中に滞在したモロッコや、タンギー自身が兵役時代を過ごしたチュニジアなどを訪れたことが推測される。このアフリカ旅行はタンギーの作風に大きな影響を与えることになる。
試行錯誤を経て、タンギーの作品は1930年代に入り技術的な洗練を示す。1920年代の多くの作品では、空間や色彩は薄暗く、不定形物体群のフォルムもしばしば曖昧だった。これに対して、アフリカ旅行後は、それまでタンギーのイメージを覆っていた不透明な大気が次第に晴れていき、空間が透明化する。そして空間内を浮遊し、漂っていた物体群が次第に前景に集まり、文字通り「地に足をつけ」はじめる。そのフォルムも明確で硬質なものに変化している。色彩も全体的に明るく、かつ透明なものになっている。
タンギーの詩的な世界
本作《青い午後》では、合理的な説明を拒むように、硬質なものに変化した物体群が前景に集まっているのが確認できる。物体群のフォルムは明確であり、地面に投影されたシルエットなどはデ・キリコを思い起こさせる作品となっている。
デ・キリコにインスピレーションを受けたというだけあって、本作《青い午後》でも屹立する物体が地面に落とすくっきりしたシルエットなど、非具象派主義のシュルレアリスムの固有のスタイルを有している。
本作《青い午後》の空間的パラドックスは、表面上における色の連続的なグラデーションにより達成した空と地面の合併的な描写に依存するものである。他の作品群と同様に、ここには地平線は描かれていない。
プラスチック的な固形性が添えられた幾何学的な精度や、綿密で細かい技術により、タンギーの世界の詩的な不思議さが高められている作品である。
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