作品概要
《トランプ占いの女》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1914年から1914年で、徳島県立近代美術館に所蔵されている。

《トランプ占いの女》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1914年に制作した水彩画である。
水彩画への挑戦
渡仏翌年の1914年、第1次世界大戦が勃発すると、日本からの送金が途絶え、油絵の画材を買い求める資金に困窮したことから、藤田はこの時期、水彩を多く手がけるようになった。本作も水彩画である。
当時パリの美術界では、ピカソとブラックの推進したキュビスムが大きな影響力を持っていた。キュビスムは自然、物体、人物を目で見たままではなく、理性(脳髄)によって分析し、再統合するというものだった。複数の視点から立体を把握しようとするその様式にならい、多くの芸術家が制作を試みた。藤田も例外ではなく感化され、敏感に反応してキュビスム風の作品を手がけている。
ピカソとの出会い
渡仏後ほどなくして藤田もピカソと出会った。そして、ピカソのアトリエで彼の作品と、彼が持っていたアンリ・ルソーの油彩画を見て衝撃を受けた。「我々は如何に自然を解釈し、翻訳して紙に現すかの時代に達して居るのである。しかも単に目から見た、写真機械のような見方ではだめである。必ず我々の脳髄で見、そして知った自然を画布の上に翻訳しなければならない」と藤田は述べている。
本作でも直線で区切られた面により画面が構成され、多視点からみた女性の姿が画面上で結合されている。こうした先端の絵画様式を試みたのち、藤田は独自の絵画を模索していくことになる。
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