作品概要

弧の増殖》は、画家のイヴ・タンギーによって制作された作品。制作年は1954年から1954年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

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《弧の増殖》はフランスの画家イヴ・タンギーによって1954年に制作された油彩画である。ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

物体群の増殖

1940年代末から1950年代の作品では、不定形の物体群の鋭角化、細分化、増殖の傾向が顕著となり、物体群の増殖は本作《弧の増殖》で頂点に達する。画面を埋め尽くした物体群には、もはや行き場がない。

当時タンギーは、1日当たり9時間ほど深く集中して制作に当たっていたという。この年にタンギーとセージの共同展がハートフォードのワズウォースで開催され、これがタンギーの生前最後の展覧会となった。タンギーは展覧会の終了後、年が明けて間もなくの1955年1月15日、ベッドから降りようとして頭から落ちたことによる脳出血で急逝した。

本作《弧の増殖》は、タンギー作品のタイトルとしては珍しく直接的な読み方ができる。タンギーのイメージは名指しできるものではない。このため、タイトルは隠喩的なものとならざるを得ない。しかしながら、本作《弧の増殖》は、「弧」つまり曲線状のものが画面いっぱいに「増殖」しているというイメージをそのまま形容したものとも取れる。さらに、「弧」が不定形の物体群を指すとすれば、タンギーの世界の生成はまさに、「弧の増殖」と言い表すことができる。

本作《弧の増殖》では、初期から中期にかけての夢のような情景は一切描かれず、塔や彫刻的な形状、あるいは空に浮かぶオブジェもない。地平線からは何もそびえず、すべてが破壊され、塔は地面に砕け落ちている。タンギーがよく知っていたように、壊れた塔は、精神分析用語においては去勢や死を意味する典型的象徴である。

アーチの増殖

「弧」はアーチのことでもある。タンギーに影響を与えたデ・キリコのアーチは記号の孤独を象徴していた。そのため、タンギーの世界の生成は「アーチの増殖」あるいは「アーチの積」であり、つまり記号の孤独の培養である。

デ・キリコは形而上絵画によって、世界を無意味として描き出した。究極的なシニフィエを失った世界は謎となり、イメージの領域が顕在化する。デ・キリコのイメージに出会い画家となったタンギーは、デ・キリコの謎を純粋な形で自己増殖させ、イメージの領域を極限化させた。

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基本情報・編集情報

  • 画家イヴ・タンギー
  • 作品名弧の増殖
  • 英語名Multiplication of the Arcs
  • 分類絵画
  • 制作年1954年 - 1954年
  • 製作国アメリカ
  • 所蔵ニューヨーク近代美術館 (アメリカ)
  • 種類油彩
  • 高さ101.6cm
  • 横幅152.4cm
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