作品概要
《明日》は、画家のイヴ・タンギーによって制作された作品。制作年は1938年から1938年で、チューリッヒ美術館に所蔵されている。

《明日》はフランスの画家イヴ・タンギーによって1938年に制作された油彩画である。チューリッヒ美術館に所蔵されている。
タンギーのイメージの由来
現在に至るまでタンギーに関してなされてきた言説の大部分は「タンギーのイメージの由来は何であるのか」もしくは「タンギーの描く物体群は何であるのか」という問題を焦点にしてきた。それらの言説の中でも代表的なものが「地方起源説」である。地方起源説とは、タンギーのイメージを、タンギーが訪れた様々な土地に当てはめて解釈しようとする傾向を指す。とりわけ多いのがブルターニュに関するものである。
タンギーの両親は生粋のブルターニュ人であり、タンギー自身はパリに生まれ育ったものの、1908年の父の死後4年間、ブルターニュの親戚の家に預けられており、16歳の時に母親がブルターニュの小村ロクロナンに移ってからは定期的に同地を訪れている。
「ブルターニュ」的なものへの愛着
このような事実から、多くの識者がタンギーのイメージをフランスにおいていわば「辺境」であるブルターニュの特異な風土に当てはめようとしてきた。またブルターニュはケルト文化の影響が色濃く残る地域であり、ケルトの伝説やメンヒルやドルメンなどの巨石群、抽象性の強い美術との類似が常に語られてきた。
またブルターニュの他の「地方起源説」としては、1930年にタンギーが訪れたアフリカと、タンギーの亡命先であるアメリカに関するものなどがある。
明るい色彩
試行錯誤を経て、タンギーの作品は1930年代に入り技術的な洗練を示す。1920年代の多くの作品では、空間や色彩は薄暗く、不定形物体群のフォルムもしばしば曖昧だった。これに対して、1930年代の作品では、空間は透き通り、色彩は明るくなり、物体群のフォルムも明確で硬質なものに変化している。
本作《明日》は、他の作品群とはやや異なり、白を基調として明るい色彩に支配されており、牧歌的でのどかという印象さえ受ける。
物体群のフォルムは明確であり、地面に投影されたシルエット、人間のようなオブジェ群など、デ・キリコを思い起こさせる作品となっている。
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