作品概要
《宝石箱の中の太陽》は、画家のイヴ・タンギーによって制作された作品。制作年は1937年から1937年で、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館に所蔵されている。

《宝石箱の中の太陽》はフランスの画家イヴ・タンギーによって1937年に制作された油彩画である。ソロモン・R・グッゲンハイム美術館に所蔵されている。
イメージ基本構造の確立
1920年代後半に、タンギーのイメージの基本構造が確立し、以後タンギーは、茫漠とした空間に蠢く不定形の物体群をひたすら描きつづけることになる。
あらかじめ計画せずにキャンバスに直接描くタンギーの作品の構成は、ブルターニュ地方(タンギーの両親はブルターニュ人である)の風景を想起させるものである。タンギーは幼い頃からブルターニュ地方を訪れていて、同地に愛着を持っていた。
アフリカ旅行の影響
1928年、タンギーは、シュルレアリスト達の集会場となっていたシャトー通りでの共同生活を終え、前年に結婚したジャネットと暮らしはじめた。1930年には夫婦で北アフリカを旅行している。この旅行の経験により、ブルターニュ地方に関する記憶に加えて、その記憶のレパートリーはさらに増加することになる。
試行錯誤を経て、タンギーの作品は1930年代に入り技術的な洗練を示す。1920年代の多くの作品では、空間や色彩は薄暗く、不定形物体群のフォルムもしばしば曖昧だった。これに対して、アフリカ旅行後の1930年代の作品では、空間は透き通り、色彩は明るくなり、物体群のフォルムも明確で硬質なものに変化している。
空間的パラドックス
本作《宝石箱の中の太陽》では、画面を支配する色彩はやや薄暗いものの、物体群のフォルムは明確であり、地面に投影されたシルエット、人間のようなオブジェ群など、デ・キリコを思い起こさせる作品となっている。
本作《宝石箱の中の太陽》の空間的パラドックスは、表面上における色の連続的なグラデーションにより達成した空と地球の合併的な描写に依存するものである。ここには地平線は描かれておらず、オブジェの配置、オブジェと影の関係、あるいはそれ自体によって、全体的に鋭角が暗示されている。プラスチック的な固形性が添えられた幾何学的な精度や、綿密で細かい技術により、タンギーの世界の詩的な不思議さが高められている。
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