作品概要
《静寂と果てしない不安》は、画家のイヴ・タンギーによって制作された作品。制作年は1934年から1934年で、ストックホルム近代美術館に所蔵されている。

《静寂と果てしない不安》はフランスの画家イヴ・タンギーによって1934年に制作された油彩画である。ストックホルム近代美術館に所蔵されている。
1930年代の作品の特徴
1920年代後半に、タンギーのイメージの基本構造が確立し、以後タンギーは、茫漠とした空間に蠢く不定形の物体群をひたすら描きつづけることになる。1928年、タンギーは、シュルレアリスト達の集会場となっていたシャトー通りでの共同生活を終え、前年に結婚したジャネットと暮らしはじめた。1930年には夫婦で北アフリカを旅行している。タンギーは制作に際して事前の計画や下書きは行わないが、この旅行後の幾つかの作品では例外的に下書きを行っている。これらの作品の特徴は、不定形物体群が隆起する地面としばしば一体化している点にある。
こうした試行錯誤を経て、タンギーの作品は1930年代に入り技術的な洗練を示す。1920年代の多くの作品では、空間や色彩は薄暗く、不定形物体群のフォルムもしばしば曖昧だった。これに対して、1930年代の作品では、空間は透き通り、色彩は明るくなり、物体群のフォルムも明確で硬質なものに変化している。
デ・キリコの影響
本作《静寂と果てしない不安》では、画面を支配する色彩はやや薄暗いものの、物体群のフォルムは明確であり、地面に投影されたシルエット、動物や人間のようなオブジェ群など、デ・キリコを思い起こさせる作品となっている。
タンギーは、デ・キリコ作品との出会いを次のように語る‐「その頃のある日、私はボエシー通りを下るバスのデッキに立っていました。ポール・ギヨーム画廊のウィンドウの2つの絵が私の目を捕らえました。私はバスを降りて、見とれてしまったのです。それらはキリコのもので初めて見るものでした」。
キリコにインスピレーションを受けたというだけあって、本作《静寂と果てしない不安》では、不穏な空、屹立する物体が地面に落とすくっきりしたシルエットなど、非具象派主義のシュルレアリスムの固有のスタイルを有し、キリコやダリに通じるシュルレアリスム絵画共通のクリシェも取り入れている。
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