作品概要
《坂道》は、画家のピエール・ボナールによって制作された作品。制作年は1922?年から1922?年で、ティッセン=ボルネミッサ美術館に所蔵されている。

フランスの南北を描いた画家
本作が描かれた1922年、ボナールはノルマンディーとコートダジュールの22の風景画を描いた。フランスの南部および北部は、彼の関心を競う二つの極であった。画家の甥であるチャールズ・テラスは、「ボナールは、南部の光よりも北部の光がより魅力的だと感じていた」と語っている。「間違いなくおじは、ドゥービル、トゥルービル、オンフルールと同じような、変わりやすく美しい空はないと信じていた。また、北部で見られるトネリコ、シナノキ、クルミの木、リンゴの木などを愛していた」
1933年、ボナールは知人の教授に「南を描くことができない。南の風景には色がない」と告白している。装飾的なスタイルと大規模なスケールで描かれたボナールの南部を描いた風景画では、しばしば神話的な暗示に頼った。北部を描いた風景画はより写実的な特徴を持ち、日常のテーマや逸話だけに基づいていた。
描写
描かれているのは、セーヌ川流域にあるヴェルノンの、画家の家近くの道の景色である。ボナールの風景画には、隠された存在が描かれていることが多く、その発見には時間がかかる。ここでは、道を横切っているめんどりの、ユーモアなモチーフがそれにあたる。(1887年のゴーギャンの《熱帯植物(マルティニーク)》にも、類似したものが描かれている)。
効果
ボナールは、開かれたものと閉じたもの、2つの風景画モデルを同時に培った。そのひとつは、地平線の全長にわたるパノラマ景色を表す風景画である。もうひとつは、畑や海が、窓やバルコニー、ドアで囲まれている作品である。これは屋内の人物や物体をフレーミングする鏡と同様の効果がある。
この作品の場合は、そのような技術に頼ることはせず、道は茂みの間で地面に深く切られ、フェンスに囲まれた家の壁によってフレーム化されている。パノラマの風景は上からの視点で見えるのに対し、ここでは逆の方向からの風景となっている。目は水平線の下にあり、坂道は鑑賞者が一瞥で風景を見ることを防ぎ、囲い込まれたような感覚を引き起こしている。
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