作品概要
《恋人たち》は、画家のイヴ・タンギーによって制作された作品。制作年は1929年から1929年で、フォルクヴァンク美術館に所蔵されている。

《恋人たち》はフランスの画家イヴ・タンギーによって1929年に制作された油彩画である。フォルクヴァンク美術館に所蔵されている。
ゆらめく恋人たち
本作《恋人たち》が描かれた1920年代の間は、タンギーの描く不定形物体群はアメーバや、海洋生物、エクトプラズムのような形態を示し、数もまばらであった。その後は次第に確固としたフォルムを備えはじめ、画面に比して巨大化しつつ、より複雑な形態を取り、硬質な無機物あるいは機械を思わせるものとなる。後年、さらに増殖と細分化の兆しが見られはじめ、巨大化、複雑化、増殖化、細分化は極限まで進むことになる。
本作《恋人たち》には、タンギーの作品に多く共通する海底のような、紫がかった灰色の領域に本作のタイトル《恋人たち》を連想させる2つの物体がゆらめいていて、画面中央のやや上部にはエクトプラズムのような物体の塊が確認できる。
タイトルとの整合
タンギーのイメージは明確な指示対象を持たないので「読解不可能性」は常に潜在している。本作《恋人たち》の場合でも、タイトルの文字通りに捉えれば、相思相愛の間柄の男女の対を意味する。展覧会に際してほとんど一括してタイトルをつけられたとのことであるから、描かれた時点では無題であったと思われるが、タイトルはランダムに選ばれたものではなく、整合性が見出されるものであると、後年の研究で明らかになっている。
ブルトンによる評価
タンギーは20歳でフランス軍に徴兵されるが、この時に知り合った詩人のジャック・プレヴェールの紹介で、1924年にアンドレ・ブルトン率いるシュルレアリスム運動の画家達と出会うことになる。その後1927年にパリで初の個展を開催した。この個展を見てブルトンは、タンギーを「もっとも純粋なシュルレアリスト」であると評した。この時期は非常に忙しく、ブルトンはタンギーと1年で12の絵画作品の契約を交わした。
この絵画の最初の所有者は、ブルトンであった。
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