作品概要
《夏》は、画家のピエール=オーギュスト・ルノワールによって制作された作品。制作年は1868年から1868年で、ドイツ旧国立美術館に所蔵されている。

『夏』は1868年にルノワールが20歳頃のリーズ・トレオを描いた作品であり、現在はドイツの旧国立美術館に所蔵されている。
1867年に『日傘のリーズ』でパリサロンにおける最初の成功を収めたルノワールは、この成功に触発されてか、もう少しくだけた形のトレオを再び描こうと考えたようである。
縦85センチ、横59センチの半身肖像画の中で、生い茂る緑を背景に、おそらくはバルコニーの上、そのヘリの側に置かれた椅子の上で、くだけた服装の若い女性がこちらを向いて座っている。女性、すなわちリーズの姿は念入りに描き上げられているが、木漏れ日を表現するためであろうか、背景は幅広のブラシ捌きを用いた塗り跡が走る荒削りな仕上がりになっている。薄手のヘアバンドであげられた彼女の髪は頭の脇から前に流れ、暗色のウェーブを成し、肩ごしに緩く広がって、白い裑服(ボディス)に垂れ下がる。服の右肩紐はずり落ち気味で、首筋から胸元を大きく露わにしている。
リーズの表情は何処か遠くを見つめるように、絵を見る者の右手にぼうっと視線を注いでいる。むき出しの腕は、赤と白のストライプスカートの上で太ももに横たえられ、右手には何かの葉が握られている。
当絵画は、ロマン派画家ウジューヌ・ドラクロワが1823年に残した『墓場の孤児』の構図と、ギュスターヴ・クールベの技法とに影響を受けたものである。ルノワールがこれら先達の格式あるアトリエ画を、よりくだけた印象派的技法に練り直した試みであるとも言えよう。1869年のパリサロンにこの絵が展示されたとき、その題名は『夏、習作』というもので、前作『日傘のリーズ』よりも荒削りに描き上げた本作に対する批評をそらす狙いがあったと言われている。
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