作品概要
《日本趣味:雨の大橋》は、画家のフィンセント・ファン・ゴッホによって制作された作品。制作年は1887年から1887年で、ファン・ゴッホ美術館に所蔵されている。

歌川広重の模写
ゴッホは32歳のときにパリに移住し、その時に浮世絵と出会った。本作品はゴッホが日本趣味(ジャポニズム)に対する強い憧れが顕著に示されている作品の一つであり、19世紀前半を代表する浮世絵師の歌川広重随一の錦絵「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」を忠実に模写した作品である。
この時期、その他にも同じく歌川広重の「梅の花」などの模写作品を残しており、ゴッホは浮世絵を模写することで、その構図、色彩感覚、線描画法という描画技術を学んでいった。
雨の描写
本作品で特に注目するべき点は原図である「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」の最大の特徴であり、西洋の絵画表現と異なる雨の描写である。
上空から降る雨は複数の長い斜線で描かれている。これは錦絵独自の手法となっており、西洋の雨の表現とは異なるものであるが、豪雨の躍動感ある激しさなどの個性的で独自性の高い表現に惹かれてゴッホは「名所江戸百景大はしあたけの夕立」を模写したのだろうと推測されている。原図の大胆な構図で描かれている手前の大橋や、斜めに傾く水平線の妙にも惹かれたと思われる。
なお原図にはない周囲の漢字による装飾は、「梅の花」と同じく日本趣味的表現を強調しようとして描かれたと推測されている。
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