作品概要
《猫(争闘)》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1940年から1940年で、東京国立近代美術館に所蔵されている。

《猫(争闘)》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1940年に制作した油彩画である。本作が第27回二科展に出品されたときは、単に《争闘》と題されていた。
猫を扱った作品の代表作
藤田はさまざまな作品のなかで猫を登場させている。パリに渡って以来、猫を扱った作品が多いなかで最も代表的な作品だ。ほぼ楕円形の構図のなかに、10匹以上の猫が空を飛んだり、寝転んだりしながら、激しく争っている。藤田の作品の多くは愛すべき飼い猫の側面を描いたもので本作とは対照的だ。本作では、歯をむきだし、激しく争う獣としての本性を繊細さと大胆さの共存する卓越した描写力で表現している。
それぞれの猫が関連性を持ちながら、螺旋を描くようにして画面を構成している。動的な場面にもかかわらず、どこか感情を抑制しているようにも感じられる。均衡のとれた構図や、対象のフォルムへのこだわりが静的にみせているのかもしれない。
戦時下における画家の心境が表出
1929年9月第2次世界大戦が始まると、藤田はパリから避難せざるをえなくなった。それから1940年5月に日本に帰国するまでのあいだに本作品を制作した。
十数匹の猫が動物の本能をむきだしにして争っている。宙に高く飛び上がり、まさに相手に襲いかかろうとするものや、あおむけになり口を大きく開けて鳴くものなど、さまざまな猫の姿態やその表情が戦時下における藤田の複雑な胸のうちを暗に示している。
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