作品概要
《イヴ》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1959年から1959年で、ウッドワン美術館に所蔵されている。

《イヴ》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1959年に制作した油彩画である。
創世記が題材
異邦人の画家として過ごしたエコール・ド・パリ時代とは異なり、晩年の藤田はフランス人の画家として生きていくことにした。1955年にフランス国籍を取得すると、ランスでカトリックに改宗した。洗礼名はレオナールだった。本作はその頃の作品だ。
旧約聖書の創世記に登場するイヴをテーマにした作品だ。神は土のちりでアダムを、あばら骨からイヴを創った。そして、エデンの園の善悪を知る木の実をとって食べることを禁じた。アダムとイヴは裸だったが恥ずかしいとは思わなかった。だが、イヴはヘビの誘惑に負けて善悪の実を食べた。すると裸であることが恥ずかしくなり、それに怒った神はエデンの園からヘビと人を追い出した、といわれている。
藤田は最初の人間とされるアダムを理想とし、イヴを恋人とし、他にひとりとして人間の存在もなく、動植物の大自然の楽園に、政治もなく、戦争もなく、機械文明もなく、ただ呑気に暮らしたい、と語っている。
豊穣と生命の象徴のイヴ
さまざまな野生の動物たちが生息する広大なエデンの園を背景にして、林檎を手にしてたたずむ裸のイヴの姿が描かれている。可憐な花を摘んであんた髪飾りをつけ、純真無垢な顔をした彼女の頭上には、禁断の果実を食べるようにそそのかす大きなヘビが忍び寄っている。
この絵は、まさにイヴが禁断の果実を手に取り食べようとしているところだ。地上には神が創った動植物があふれ、空には鳥が飛んでいる。だが、本作ではイヴは教えを守らなかった女というより、豊饒と生命を象徴するかのように、みずみずしい若い女性として描かれている。
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