作品概要
《私の夢》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1947年から1947年で、新潟県立近代美術館に所蔵されている。

《私の夢》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1922年に制作した油彩画である。
擬人化された動物たち
漆黒の闇のなかで、夢見る表情をたたえて横たわる裸婦のまわりを、イヌ、ネコ、サル、ネズミなどの擬人化された動物たちがとりかこみ、がやがやと騒いでいる様子だ。動物を擬人化して描くのは、藤田にとっては初めての試みだろうか。ただならぬ気配を感じさせる作品だ。
自由に伸びやかな描線で縁どられた裸婦は、豊かな量感に満ちて、美しく光り輝いている。動物たちはそれぞれの動きの特徴を、一瞬のうちに捉えて描かれている。擬人化されてはいるが、その姿かたちに違和感がないところに、藤田の画法のテクニックを感じる。
仏教絵画の「涅槃図」をも連想させる本作の裸婦の図像は、藤田の当時の妻マドレーヌをモティーフに1931年に制作された《眠れぬ女》から転用したものとも考えられている。
パリでの生活を夢見る藤田
1947年5月の新憲法実施ならびに東京都美術館20周年記念現代美術展覧会に出品された。戦後はじめての出品作で、戦争画から一転して裸婦を描いている。
戦争に敗れるとすぐに、その責任問題で日本の画壇も揺れ、藤田の周囲も騒々しくなっていた。前年には、フランス渡航のためを申請したが許可されず、翌々年アメリカに向けて出国している。日本を離れ、新天地での生活を夢見る藤田の心情が、繊細な描線で縁どられた裸婦の姿に投影されているようだ。
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