作品概要
《ジュイ布のある裸婦(寝室の裸婦キキ)》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1922年から1922年で、パリ市立近代美術館に所蔵されている。

《ジュイ布のある裸婦(寝室の裸婦キキ》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1922年に制作した油彩画である。1922年のサロン・ドートンヌの出品作で、藤田の裸婦を代表するものである。
乳白色の肌
20年代前半の藤田は裸婦などのモティーフの背景に模様のある布を描きこんだ。布は藤田の収集品で、アンティークで、ノスタルジックな雰囲気を与えている。本作でも、18世紀からパリ郊外ジュイ=オン=ジュザで生産されたジュイ布を、ベッドの天蓋と裸婦の足元の布に用いている。
こうしたジュイ布の綿密な描写を見ようと、鑑賞者が近づいたとき、真珠のような白い肌の裸の女性の思わず触れたくなる肌に遭遇することになる。日本画の技法を油彩画にとりいれるなかで生みだした乳白色の肌は、はりのある質感を見せている。
アルコーヴ(部屋に付随してへこんだようにして作ってある奥まった小室、寝室などに用いられる)に横たわる裸婦。モデルは当時、モンパルナスの人気モデルで、オリエンタルな顔の特徴をもつキキだった。丸みのある官能的な姿態は、雪のように白く、輪郭は黒のインクで描かれている。
構図はマネの《オランピア》
1863年にエドゥアール・マネの描いた《オランピア》の構図をベースにしながら、藤田が最初にモデルを使って描いた裸体画ともいわれている。
展示直後にコレクターに売られたが、藤田の心に残っていたのが、戦後1950年にパリに戻ったおりに、偶然に画廊で見つけて購入した。しばらく自宅で飾ったのち、パリ市立近代美術館に寄贈した。
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