作品概要
《カフェにて》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1949年から1949年で、フランス国立近代美術館に所蔵されている。

《カフェにて》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1949年に制作した油彩画である。藤田は1913年から1968年の間パリで多くの時間を過ごした。だが、本作が制作された1949年、藤田はニューヨークにいた。日本は第二次世界大戦に敗れてまもない頃だった。
ニューヨークでの一作
1949年3月に日本を離れた藤田は、ニューヨークへ渡り、それからおよそ10か月間滞在した。そこで《カフェにて》を制作し、11月のマシアス・コモール画廊での個展に出品した。
あるカフェの片隅で、黒いドレスを身にまとった女性が机上の便せんにしたためる内容を決めかねて、頬杖をついて物思いに耽っている。彼女の座る茶色い革張りのソファー越しに見える窓の外には、戦後まだ足を運んでいないパリの街の風景が広がっている。
思いはパリに
主題である人物の背後に描かれたのは、画家がかつて目にしていたパリの街の風景だった。窓から見えるカフェ、ラ・プティット・マドレーヌは過去に藤田が制作した銅版画から転用したものと考えられている。画家は戦前に友人のパブロ・ピカソ、シャイム・スーティン、アメデオ・モディリアーニと過ごしたモンパルナスに住んでいた頃を懐古したのだろう。
藤田の心は大都会であるニューヨークに刺激を受けつつも、海の向こうのフランスのパリへ向かっていた。画面からはもうすぐ始まるパリでの生活の期待と不安が入り混じった、画家の複雑な心情も垣間見えている。
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