作品概要
《私の部屋、目覚まし時計のある静物》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1921年から1921年で、フランス国立近代美術館に所蔵されている。

《私の部屋、目覚まし時計のある静物》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1921年に制作した油彩画である。
もので画家自身を表現
本作は、絵の縦が1.3メートルもあり、パリで描いた最初の大作油彩画だ。丁寧に仕上げられた白い下地の上に面相筆で繊細な線が引かれ、パステルカラーの色彩がのっている。同時に展示された《自画像》よりも白い下地の効果が出ている。
藤田は1913年に渡仏して以来、多くの静物画を描いてきたが、本作はその集大成とともに、新しい出発点にもなった。日常のオブジェを、親密さをこめて丁寧に描いているのはそれまでと共通しているが、オブジェそれぞれに水彩画のような繊細さや透明感を与えたことが新しかった。
アトリエの一画に、眼鏡やパイプ、木靴を配することで、画家本人の姿を描かずとも、愛用のもので自身の存在感を感じさせている。傘を持ち、木靴をはいた藤田を彷彿させる。
初期の代表作
1921年秋のサロン・ドートンヌには、《裸婦》、《自画像》、そしてこの《私の部屋、目覚まし時計のある静物》の3点が出品された。翌年には日本の帝展にも送られて母国での事実上のデビュー作となった。
本作は、1920年代初期の自らの力量の記念碑として藤田が好んだ作品の1作となっている。1940年代の麹町の家で撮影された写真にもうつっていることから大切に手元に置いてあるのがわかる。戦後に日本を離れるさいにも持っていき、最終的には1951年フランス国立近代美術館に寄贈した。藤田がフランス永住を決意した最初の表明作品ともいわれている。
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2021年9月18日 9:32 pm, ID 48554