作品概要
《アッツ島玉砕》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1943年から1943年で、東京国立近代美術館に所蔵されている。

《アッツ島玉砕》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1943年に制作した油彩画である。1943年の陸軍作戦記録画として描かれ、9月の決戦美術展に出品された。
玉砕の場面
アッツ島はアメリカ合衆国アラスカ州のアリューシャン列島にある。太平洋戦争の真っただ中、アメリカ軍の攻めで、1943年5月に島にいた守備隊が全滅した。藤田は当時大本営によって玉砕と美化されたこの事件を題材にとった。
想像の範疇で描かれた作品ではあるが、肉体が激しくぶつかりあう凄まじい激闘シーンや、高揚感と悲壮感がないませになった兵士たちの表情から、臨場感が伝わってくる。圧倒的な技術力が感じられる。
戦場に咲く紫の花
雪の積もる孤島の山々を背景に、日本兵が銃剣と日本刀のみで決死の覚悟でアメリカ兵に挑みかかっている。どれが敵か、どれが味方か判別しづらいほど絡み合った兵士たちの群像だ。
藤田は群像表現にはかなり興味を持っていたようだ。多数の兵隊を緩みのない構成で的確に配置して構図や、兵士の躍動する生き生きとした肉体の描写から、群像表現が藤田のなかである種の完成形となった作品だ。
日本兵が振りかざした刀剣の先には、すでに死んでいるが、瀕死の状態で重なり合う米兵の姿が描き出されている。戦闘の様子は褐色を中心とした色彩だが、画面のところどころに描きこまれた紫の花が鮮やかに咲き、戦死した兵士たちに対する画家の特別な思いが込められているようだ。
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