作品概要
《哈爾哈河畔之戦闘》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1941年から1941年で、東京国立近代美術館に所蔵されている。

《哈爾哈河畔之戦闘》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1941年に制作した油彩画である。
主題はノモンハン事件
藤田は数多くの戦争画を制作した。そのなかでも、本作は画家の描写力と画面の構成力が最大限に発揮された作品だ。
主題は1939年5月に起こったノモンハン事件だ。1939年7月当時の満州国とモンゴルの国境をめぐり、ハルハ川をはさんで日本軍とソ連軍が衝突し、日本は9月の停戦までに多くの犠牲者を出した。本作はこの事件の歴史的大敗の責任を取って退役した元陸軍中将・荻洲立兵の依頼だった。部下の霊を弔うため自費で制作を頼んだ。
青空と勇猛果敢は日本兵
横4メートルを超える大きなカンバスには緑の草原と抜けるような青空が描かれている。その地平線を背景にして、日本軍の兵士が敵であるソ連軍の戦車めがけて匍匐前進し、数人の兵士は戦車によじ登り、開口部を銃剣でこじ開けようとしている。
ノモンハン事件は満州国とモンゴル人民共和国の間の国境紛争であるが、じっさいはそれぞれの後ろ盾であった日本とソ連の闘いだった。日本軍はこの人対戦車の闘いに惨憺たる敗北を喫したとされているが、ここでは勇猛果敢に敵戦車に迫る日本兵の姿が画面の主役になっている。
その後この作品は、翌年7月の第2回聖戦美術展に、陸軍作戦記録画という扱いで出品されている。《アッツ島玉砕》、《サイパン島同胞臣節全うす》に見られるような茶褐色の暗い色調ではまだない。
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