作品概要
《自画像》は、画家の藤田嗣治によって制作された作品。制作年は1910年から1910年で、東京藝術大学に所蔵されている。

《自画像》は、エコール・ド・パリの代表的な画家であり、日本画の技法を油彩画に取り入れながら、独自の乳白色の肌と呼ばれた裸婦像を描いた藤田嗣治(1886-1968)が1910年に制作した油彩画である。
初の自画像
藤田は東京美術学校西洋学科へ通っていた。学校は卒業制作の課題に「自画像」を課しており、この若き藤田(24歳)は1910年に制作された。藤田は、生涯に多くの自画像を残した。同時代の画家に比べても多い。本作は、生涯描き続けることになる自画像の第1作となる。大きさは12号だ。
この自画像には、すでに藤田の特色がある。画面を色彩で構成しようという意思が見られるのだ。落ち着いた色調と粗いタッチで描こうという心構えは、斜に構えたポーズからも見てとることができる。そのポーズはまた、世に出ようとする青年の自意識の強さといった内面の表現も垣間見られる。
白いスタンド・カラーのシャツに、緑の上着と赤いネクタイといういでたちも西洋志向の強さをうかがわせる。補色関係にある上着の緑とネクタイの赤は、画面に存在感と温かみを与えている。加えて、黒の描線が全体を引き締めている。
印象派からキュビスムへ
藤田が制作した本作は、当時の西洋画科の主任教授だった黒田清輝の画風とは異なっていた。黒田はフランスで印象派とアカデミスムをとりいれた様式を学んで、日本で実現させようとしていた。
20世紀の初頭のヨーロッパでは、印象派は過去のものとなり、キュビスムが生まれつつあった。藤田はこうした新しい流れを自然に受けいれていたと思われる。
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