作品概要
《自画像》は、画家のパブロ・ピカソによって制作された作品。制作年は1906年から1906年で、フィラデルフィア美術館に所蔵されている。

むき出しの芸術
この『自画像』はまさにむき出しのピカソで、彼を有名にした「青の時代」と「ばら色の時代」の色調を取り除いたものである。これこそが飾り気のない芸術で、過去にこれほどまでにありのままの姿の芸術が他にあっただろうか。25歳のピカソは、固く筋肉質の肉体の自画像で、まるで20世紀の伝説的な陸上選手であるのかのように描いている。
彼は、自分の右手に筆を持たせていたが、最終段階において取り除いている。筆、画家を示す物等が描かなかったことによって、創造的天才とは単純な手の器用さだけではなく、内面の描写、芸術家の情熱の象徴化等が必要であることを示している。
《パイプを持つ少年》との差異
この『自画像』に加え、1906年に制作された他の作品も、色調は中立化しているものであった。同年作の、彼がとても繊細に仕上げた《パイプを持つ少年》は、ピカソが単調ゆえにすばやく仕上げていた作風とは一線を画す記念すべき作品である。
この自画像は、詳細に似ている肖像画を描くことや心理的な側面を描き出す実験に用いられたのではなく、むしろ能面のような肖像画や、原始美術に見られるような力強さを描こうとした実験的作品だと考えられる。
石像への魅了
驚くことではないが、ピカソはこの当時、イベリアの石像に深く魅せられていた。それに加え、1906年のスペイン北部ゴソルへの旅行において、フェルナンドと共に荒涼とした風景を訪れ、新しい画風への挑戦をもたらした。
ピカソはほとんど独力で現代芸術の基礎を築いたのである。
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