作品概要
《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》は、画家の歌川広重によって制作された作品。制作年は?。

本作は広重が最晩年に手がけた故郷江戸の名所を百図以上版画に起こした絵師自身最大規模の揃物の中の1点で、日本橋から深川を結ぶために隅田川(大川)へかけられた≪新大橋(※当時、この近辺は安宅(あたけ)と呼称されていた)≫で降る夕立の情景を描いた作品である。画面中央やや下部へは右上がり的に木製の大橋が配されており、その上を数人の町人たちが突然の夕立に急ぎ足で歩みを進めている。画面上部にはこの夕立を降らせる黒々とした雨雲が描かれ、また画面下部では深度を感じさせる藍色によって隅田川が表現されている。
そして中景としては隅田川を進む船漕師の姿が、遠景として対岸の風景が傾いた水平線によって描き込まれている。
本作で最も注目すべき点は幾多の線による雨の表現にある。濃淡の強弱をつけた2つの版木による線状の雨は決して風景を邪魔することなく、天から降る雨粒の速度と、雨特有の視界の遮りを同時に表現している。この漫画的な雨の形状的表現世界の中でも日本のみと評されており、世界中の芸術家を驚愕させると共に強く魅了した。また雨の情景としては非常に簡潔な構成ながら各要素を稲妻形のようにジグザグと構成することによって画面内へ心地良いリズムを与えることに成功している。本作が醸し出す独特の詩情性や抒情的雰囲気は≪名所江戸百景≫の中でも特に秀逸の出来栄えを示しているだけではなく、日本の特有の簡潔な美意識も感じることができる。なお本作は後期印象派の画家ゴッホによって模写(模写作品『日本趣味 : 雨の大橋』)されたことから、外国でも広く認知されている。
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