作品概要
《天使のいる聖家族》は、画家のレンブラント・ファン・レインによって制作された作品。制作年は1645年から1645年で、エルミタージュ美術館に所蔵されている。

レンブラント転換期である1640年代を代表する作品のひとつである。
ゆりかごの中には、まだ生まれて間もないイエス・キリストが安らかに眠っている。その姿を横で温かく見守るのは、イエスの母親マリア。聖母マリアがイエスを慈愛深く見守る姿は、非常に温かく愛情に満ちた様子である。そしてその背後には父親の聖ヨセフがほの暗い光の中に描かれている。おそらくは、牛馬用のくびき(くびきとは、車の轅(ながえ)の先につけ、牛馬のくびにあてる横木こと。)を作っているのだろうか。そしてこの家族の頭上には、彼らを祝福する天使が飛び交っている。
この作品は聖書から題材をとったものではあるが、一般的な聖書に見られる光の輪などのイコノグラフ(キリスト教美術を中心とする美術作品の意味・内容に関する研究・学問。図解学のこと)的な要素は見られない。
それとは対照的に、当時の典型的な、農民の質素な暮らしをモチーフにしたかのようなタッチで描かれているのが特徴的である。当時のレンブラントは「聖家族」を題材とした作品をよく制作していたが、こちらの作品はそれらの中でも特に柔和な雰囲気を持ち完成度の高い作品とされる。当時、妻や相次ぐ子供の死、乳母との愛人関係、逼迫してゆく財政状況など、レンブラントの周辺には暗雲がたれこんでいた。
このような当時のレンブラントの状況とこの作品の柔和で影を含んだタッチが関係しているのかは定かではないが、当時のレンブラントの内向的な心境を表しているという説もある。
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