作品概要
《遺作》は、画家のマルセル・デュシャンによって制作された作品。制作年は1946年から1966年で、フィラデルフィア美術館に所蔵されている。

《遺作》は、フランス生まれの美術家であり、20世紀の最も影響力のある芸術家でもあるマルセル・デュシャン(1887-1968)が1946年から1966年にかけて制作したインスタレーション作品である。
アトリエでひそかに制作された作品
スペインで見つけた重厚な木製の扉に開けられた2つの穴からのぞき込むと、ジオラマが広がっている。裸の女性(おそらく死んでいる)が脚を広げ、手には灯りのともったガスランプを持った姿が見える。顔は隠されている。背景はデュシャンがスイスで取った写真をもとにした山の風景が見渡せる。鑑賞者からは見えないが、床はチェスボード模様になっている。
デュシャンは本作を1946年から1966年まで、20年にわたり、ニューヨークのアトリエでひそかに作りつづけていた。古い木のドア、くぎ、煉瓦、真鍮、アルミニウム板、木の葉、小枝、髪の毛、ガラス、リノリウム、ライトから構成されている。
初見では、ギュスターヴ・クールベの《世界の起源》(1866)を下敷きにしていると考えられる。だが、ガスランプがともっていることを象徴的に見て、アーティストと鑑賞者の境界に対する考え、自意識に対する問いなど複合的に考えられる作品である。
死後に公開
裸体の女性のモデルになっているのは、1946年から1951年まで恋人だった、ブラジル人彫刻家、マリア・マルティンスと2番目の妻アレクシーナだ。
フィラデルフィア美術館に寄贈する旨の遺言を残して亡くなり、死後、作品が公開された。デュシャンの妻、アレクシーナ・デュシャンと義理の息子のポール・マティスが作品の設置に携わり、1969年にフィラデルフィア美術館で一般に公開された。
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