作品概要
《獄中のパウロ》は、画家のレンブラント・ファン・レインによって制作された作品。制作年は1627年から1627年で、州立美術館(ドイツ、シュトゥットガルト)に所蔵されている。

レンブラントは生涯にわたり聖パウロをたびたび主題に用いているが、当作品は彼の初期の作品のひとつで、この作品が描かれた時画家は21歳であった。パウロはキリスト教において、布教の要を作り上げた偉大な使徒であり、新約聖書の信徒にあてた手紙の章のほとんどは彼の著作であると言われている。
もともとはキリスト教徒を迫害する熱心なユダヤ教徒であったが、奇跡的体験によってイエス・キリストを信じるようになり、残りの人生を誰よりも強い信仰心をもって布教に捧げた。
画面の中で、囚われの身のパウロは物思いに耽り、彼の左手に握られたペンは彼がつい先ほどまで信徒への手紙を書いていたことを示す。パウロの長い髭や禿げた頭などの特徴と彼のシンボルである剣は、伝統的な様式に則っている。すなわち剣は、新約聖書の『エフェソの信徒への手紙』の中でパウロが神の言葉を説明するためにしばしば用いた表現「聖霊の剣」を表すとともに、奇跡によって回心する前の軍人としての武勇、後に彼を待ち受ける斬首による殉教をも象徴している。
生き生きとした陰影の描写、積み重ねられた私物の醸し出す生活感は、画面にパウロが実在していたかのような鮮やかな体験を鑑賞者に促す。どこか物憂げな老齢のパウロは深く黙想しながら彼の書簡のひとつに没頭している。壁を照らす神秘的な光はパウロの頭を包み込んでいるが、同時に後光のような効果も醸し出している。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。