作品概要
《バラムとロバ》は、画家のレンブラント・ファン・レインによって制作された作品。制作年は1626年から1626年で、コニャック=ジェイ美術館(パリ)に所蔵されている。

この作品はレンブラントの初期の作品の一つで、まだ自身のアトリエを構えたばかりの頃に描かれた。彼の師であり当時オランダ最大の歴史画家として活躍していたピーテル・ラストマンの影響を色濃く反映している作品でもあるが、師が天使をロバの前に描いたのに対し、レンブラントは天使をロバの後ろに描くなど新しい構図を試みている。
主題は、旧約聖書の民数記22章に現れる、異国の占い師バラムがモアブ人の王バラクの頼みでイスラエルを呪うために出かける途中での出来事である。ロバには、神が祝福するイスラエル人を呪わないようにと現れた天使が見えるため、恐れて前に進もうとしないが、バラムは天使が見えないので、ロバを鞭打って叱責する。神話の動物のごとく人語を話すロバとバラムの口論が巻き起こり、ついにバラムの目が開かれると、バラムは剣を抜き放つ天使を目撃することとなる。
X線調査により、この作品は天使と空、風景など遠方から完成され、その後バラムや画面右の少年たち、ロバといった手前のモチーフが描き込まれたことがわかっているが、このような系統的な描かれ方は当時一般的であり、セザンヌのように画面全体に手を入れていくような描画方法は19世紀以降一般的になった。天使との対話によるバラムの改心は、使徒トマスの前に現れたキリストの予型と見做され、宗教美術へと発展した。
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