作品概要
《使徒パウロ》は、画家のレンブラント・ファン・レインによって制作された作品。制作年は1657年から1657年で、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートに所蔵されている。

聖パウロはレンブラントにとって生涯にわたり興味の対象であったが、その理由はおそらく当時オランダで主流の改革派神学がパウロの言葉にもっとも重要な根拠を見出していたためか、あるいはイエスに会わずして神の恵みを受けたパウロにキリスト教徒の理想像を重ねていたためであろう。
囚われの身ながら信徒に励ましの手紙を書き続け布教と信仰の強化に努めたパウロは、これから書く手紙を前に熟考している。堅固な顔つきが醸し出す謹厳な雰囲気が強調するのは、彼の深い信仰と異教徒へキリスト教を広めるという彼の使命である。
画面右に見える剣は、新約聖書の『エフェソの信徒への手紙』の中でパウロが神の言葉を説明するためにしばしば用いた表現「聖霊の剣」を表すとともに、奇跡によって回心する前の軍人としての武勇、後に彼を待ち受ける斬首による殉教をも象徴している。
もともと楕円形に構成されていたこの作品の構図には幾度かの変更が見られるが、レンブラントはパウロの肘下に描かれていた本を取り除き人物のポーズの意味合いを簡潔にし、聖人が沈思黙考する姿に重点を置くようにした。
パウロの頭部、手、そして手紙を照らす穏やかな光の源は明確ではない。また全身ではなく半身のみ描くことによって、レンブラントは鑑賞者を聖者の姿へ注目させ、その緊張感を鋭く感じ取らせようとしている。
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