作品概要
《ゴートロー夫人の乾杯》は、画家のジョン・シンガー・サージェントによって制作された作品。制作年は1882年から1883年で、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館に所蔵されている。

モデルと描かれた背景
ピエール・ゴートロー夫人は1859年にヴァージニー・アヴェーニョとして生まれ、《マダムXの肖像》のマダムXとして知られる。非常に優美なモデルであったが、サージェントの肖像画としては最も悪名高い作品となってしまった。
《ゴートロー夫人の乾杯》は《マダムXの肖像》の一年前、もっと小さく個人的な作品として描かれ、夫人の母親に寄贈された。
後に芸術界に大きな衝撃を与えるとはサージェント自身も想像していなかったと思うが、本作は《マダムXの肖像》に至るまで、ゴートロー夫人をモデルに色々と試行錯誤を重ねていた研究作品の一つである。
構成と色使い
黒いドレスを着てショールを肩にかけ、片方の腕が乾杯をするために伸びている。乾杯相手の男性はフレームの外に位置している構図だ。モデルはリラックスして素の姿を見せ、抑圧から自由になっている様子が描かれている。
ゴートロー夫人が着ている黒いドレスは《マダムXの肖像》で着ているものと同じだ。背景には暗い色が使われており、全体的に灰色がかったトーンの色使いとなっている。ほんのりとした光が魅惑的に彼女の体に落ちている描写にうっとりさせられる。
サージェントは特に首周りを詳細に丁寧に描いているが、体や腕、花が飾られたテーブル、ランプやシャンパングラスといった要素は対照的にラフな筆使いで描かれており、モデルの誘惑的な一面をほのめかす表現となっている。
現在の所蔵
現在、本作はイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の所蔵となっており、ガードナーはこの作品を晩年に入手した。
サージェントのキャリアの中で重要な作品を獲得したいという思い、そして不名誉を被ってしまった《マダムXの肖像》と、自身もサージェントに描いてもらった自画像とで、感性的な衝撃の面で張り合いたいという気持ちがあったからだと言われている。
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