作品概要
《ヘラクレイトスの橋》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1935年から1935年で、個人蔵に所蔵されている。

ベルギーのシュールレアリズムが最盛期を迎えた1935年、マグリットはたくさんの作品を生み出した。これは劇作家のクロード・スパークがスポンサーとなり彼の経済面を支えてくれたおかげである。
マグリットは商業的な仕事を捨てて芸術活動のみに集中できるようになる。しかし、マグリットは絵の基となる思考や想像力を優先させるべきか絵画性を求めるかで揺れ動いていた。その中でもこの『ヘラクレイトスの橋』は情緒的な風景画の技法で見事に丘の斜面や水面を描いている。
霧のように立ち上がってくる雲は絵画の前で手で払いたくなるようなほどの写実性である。厚い雲のかかっている山の麓を一本の川が、(おそらくサンブル川と思わせる)が流れている。その中間を橋が渡っているのだが、途中で雲に切断されて向こう岸に届いているのかが見えない。理論的に見るとただ雲の向こうに隠れているだけでそこには存在するであろう橋を我々は思い描くであろう。
そして橋の半分は厚い雲で消えてしまっているが水面には向こう岸まで渡っている橋がしっかりと反射されている。視覚の神秘であろうか。。。本当にそこには橋が存在するのであろうか。そしてこの作品のタイトルであるヘラクレイトスだが、古代ギリシャの自然哲学者であり、彼の水の流れに関する言葉を思い起こさせるのである。
「だれも一度浴びた水を二度浴びることはできない。始まりも終わりもない物質は、生まれ死ぬと同時に、ふいに現れては消え去るのである」
まさにこの作品を表しているようである。
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