作品概要
《観光案内人》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1947年から1948年で、姫路市立美術館に所蔵されている。

戦争が終結し元の冷ややかで印象深いイメージを持つシュールレアリズム的感覚を取り戻したマグリットは1947年にこの『観光案内人』を描く。この作品では巨大なチェスのポーンに似た体に大砲のような頭部が乗せられている人物が肩からローマ皇帝のように紫色のトーガ(ローブ)を羽織っている。
大砲に描かれた目は鋳物鉄でできていてどこかコミカルな雰囲気を醸し出している。(ちなみに展覧会などでこの作品は『かわいい』とか『アニメのようだ』といって人気がある)。左手は人間の手をしており、どこかの名所であろう建物をそれぞれに乗せた三つに枝分かれしたスタンドを持ち、空を向いて火を噴き出している。
そこはおそらくどこかの観光名所なのだろうが、海に面した大きなテラスのようである。まったく同じような格好の案内人が2人バックにもいてそれぞれが違う方向を向いて広い曇り空を監視している。原題は『キケロ』といい、古い言葉で観光名所を案内し歴史的、芸術的、考古学的な説明をする人を指すらしい。
象徴的な外観を持ち、人間の形をした偶像だが不思議にもその非人間性からは恐怖や脅威というものがあまり感じられない。そして彼らが存在する時代がはたして現代なのか古代ローマ時代なのであろうか定かではない。彼らはまるで古代の神官が執行う儀式に参加しているかのようにも見える。
ドイツの哲学者フィヒテは『物体は、現実と想像とのあいだを揺れ動く』といっているがこの観光案内人もマグリットの現実と想像のを行き来しているそんな感じを覚えるのである。
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