作品概要
《曲芸師の思想》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1928年から1928年で、ミューヘン、国立現代美術館に所蔵されている。

1925年には造形的な探求を放棄したマグリットであるが、相変わらず、ピカソやデ・キリコ、エルンストといった現代絵画の大家からの影響については鋭敏であった。この『曲芸師の思想』は同年に制作された『曲芸師の休息』と対をなしている。
切断され歪められた女の体が2体しっかりとセメントで固められて石の壁にはめ込まれているのが『休息』だが、『思想』では逆に切断され歪められた様々な肉体の部分が広々とした空を背景にしてディスプレイされているかのようである。切断された部分と部分がどこか他のパーツと繋がっていてあくまでも一体の体なのである。背景にはマグリットの青い空と白い雲が展開されている。
向かって左には銃身を掴んでいる腕と腹部で、鉄砲が小道具として描かれ、中央下にはチューバを左手で掴んでいる腕と胸の部分がある。不思議なのは絵の下の部分で、膝のところでもう一方の体とつながり龍の尻尾のように巻いてあり黒いチュニックに覆われている部分で、なんとも異様な物質のようである。
マグリットが語るには「私は空虚な彼岸に熱を感じない。もっとも、私が物質に加工しようとするのは、感じ取れないものなのだ。そして感じ取れないものは冷たいものでしかありえない。」
一体の体が伸縮自在に広げられて空間に固定されているのはピカソを思わせる手法だ。しかしマグリットはこの物質に銃やチューバを持たせ、そしてそれを写実的に描いたところから物質が『生きたモデル』として表されているのである。
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