作品概要
《誘惑者》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1951年から1953年で、個人蔵に所蔵されている。

一見、唯の風景画のように見える作品である。海を航海している青い帆船。真っ青な空と海。そこに浮かぶのは海と全く同じ色の帆船。帆船に海の色が反射しているのか、はたまた空が帆船の形に切り抜かれて海の水が流れ込んでいるのか。そしてその切り取られた帆船の後ろには何があるのだろうか。
空にはマグリットのお気に入りのモチーフ、白い雲が浮かび、帆船は穏やかな航海を続けている。しかしこの作品の中には時間、場所、気候など何の情報を与えるヒントも描かれていない。まるで空想の一コマのようである。
シュールレアリズムにおいてこのように異様で非理論的な物の位置付けはよくあるものである。まるで帆船を切り取って貼り付けたような不自然な構成である。と同時におそらくマグリットはベルギーの中心、ブラッセルの小さな街で育ち、海と関わる事はとても少なかったようである。夢の中で見た海に近い物を描いているのではないだろうか。
この作品では彼は二つの全く異なるコンセプトを並べている。実際に描かれた海を象徴するモチーフとタイトル『誘惑者』。双方とも実際の意味から分離させて絵の上で合体させている。ある批評家は帆船は実はミラージュ、偽りであると書いている。見るものは皆誘惑されごまかされている。
この作品は最初に1950年に作成され、現在はヴァージニア美術館で展示されている。その他同じタイトルの作品が何枚か存在し、個人や他の美術館が所蔵している。
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