作品概要
《脅かされる暗殺者》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1926年から1926年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

この作品はマグリットの物としては著しく大きく、まるで壁に映写された映画のシーンを見ているかのようである。この絵の中では残虐にも首を落とされた裸の死体とその脇ではキリッとビジネススーツを着こなしている殺人者が蓄音機のメロディーを聴きながら邪悪な表情を漂わせている。
そして皮肉にも彼は知らないのだが、山高帽を被った二人の襲撃者がすぐ手前で彼を待ち構えているのである。彼の表情とこれから起きるべきであろうことのギャップが絵を見る者には興味深い。
そしてそれを見つめているのが雪を頂いた山々を背にしている三人の男達。なんとも残虐なようでひんやりとした静けさを感じる作品だ。この作品は映画化されたファントマシリーズのあるシーンからインスピレーションを得て描いたものだ。シュールレアリズムの画家の多くは、マグリットを含め、1912年に流行したルイ・フュイレードの映画の ”ファントマ”シリーズにすっかり魅せられていた。
当時流行した大衆小説、ピエール・スヴェスターとマルセル・アランが交代で書き上げたシリーズの映画化だが、マグリットはファントマの持つ国や組織に楯突き秩序を破壊する大胆なキャラクターにすっかり魅せられていたのだった。そしてまたシュールレアリズムの画家達は残虐でサディスティックな犯罪への執着に興味を覚えた。しかし凶器として手すり棒や魚網を持って待ち構える殺人者達や暗殺者を窓の外から眺めて居る男達などマグリットは彼のスタイルで矛盾に満ちた作品を作り上げたようだ。
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