作品概要
《黒いアネット》は、画家のアルベルト・ジャコメッティによって制作された作品。制作年は1962年から1962年で、ジャコメッティ財団に所蔵されている。

《黒いアネット》は、スイス出身の20世紀の彫刻家であり、画家でもあるアルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)が1962年に制作した油彩画である。
モデルのアネット
1943年、アネット・アーム(1923-1993)はスイスのジュネーヴでジャコメッティと出会った。それから6年後の1949年、ふたりは結婚した。かねてからパリのイポリット・メンドロン通りに住んでいたジャコメッティと暮らすようになり、生涯添い遂げた。
アネットはアルベルトのお気に入りのモデルのひとりだった。彫刻、絵画とドローイング――人物画からヌード、スケッチまで――の膨大な量は、弟ディエゴをモデルにした作品の数と匹敵する。
何度も引かれた描線
本作では、アネットの姿が黒く描かれたのち、グレーに彩色している。そのあと、白で加筆している。背景はグレーを塗り重ねているが、カンバスの端は白い余白を残している。この画家自身が残した余白のような枠が肖像画としての機能に一役買っている。黒い色調は1960年代の他の作品にも見られる。頭部の輪郭は顔の目鼻と同じく何度も描きなおしたあとから、画家のこだわりが感じられる。アネットの目は大きく見開かれ、まっすぐこちらを見つめている。その姿は、ジャコメッティが高く評価していたコプト美術の葬式のときの肖像画を彷彿させる。
本作は1962年《黒いアネット》としてスイスで展示され、1964年にはスイスのバーゼルで国際的なグループ展の一環で《アネットの肖像》とタイトルをつけ出品した。1965年には《アネット》としてイギリスのロンドン、デンマークのフムレベックの画家の回顧展で展示された。これらの展覧会のカタログには、制作年が1962年と記載されている。
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