作品概要
《放蕩一代記(8,精神病院)》は、画家のウィリアム・ホガースによって制作された作品。制作年は1732年から1735年で、大英博物館に所蔵されている。

『放蕩一代記』は1735年にウィリアム・ホガースが自己の絵画を元に版画として作成した八枚組作品で、最後の八枚目では場所がベドラムのベツレム精神病院に移り、主人公がみじめな余生を過ごすさまをありありと描いていく。
半裸のトム・レイクウェルは、これまでの精神的重圧から既に精神を深く病んでしまい、一人慈悲深く彼に付き添うサラ・ヤングの看護を受けている状態である。カツラを被っている男性は、おそらくはこの病院の看護師や世話役といったところであろう。ハンカチを手に泣きながらトムの看護をするサラであるが、トムの方はと言えば、そのような憐れな彼女に目を向けず、地面を向いてうなだれている。トムの胸元にはいくつか傷があり、自殺を試みて果たせなかったことが暗示されている。
背後には別の精神病患者たちが多く描かれている。仕立て屋、音楽家、天文学者、また自分を神や法王などと信じ、安っぽい諸聖人の印刷画を房の壁に貼り付けている男。自らが王であると信じ込み、裸で佇立し藁の王錫を携える男は冠を外さず、藁のベッドに放尿している。
このような悲惨な状況の中、貴婦人の衣服に身を包んだ二人の女性が見世物感覚でベツレムを訪れている。この時代のベドラムの悪名が高い理由がここにあり、貴族などの見物客は相当の代金を支払って精神を病んだ人々の奇態や暴力を見物し、楽しむことができたのである。また、希望者には患者をつついて反応を見て楽しむため、長めの杖を持ち込むことが許されていた。
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