作品概要
《娼婦一代記(6,モルの葬式)》は、画家のウィリアム・ホガースによって制作された作品。制作年は1732年から1732年で、大英博物館に所蔵されている。

『娼婦一代記』は、1731年に絵画として、また1732年には版画として作成されたウィリアム・ホガースの六枚組作品で、この絵はその六枚目である。
六枚目の舞台は、荒れ果てたモルの部屋で彼女の通夜が営まれている場面である。部屋に集まる者はほとんどが同業の娼婦で、その性根の悪さ、貪欲さが描かれる。棺桶に刻まれた文から、モルは1731年9月2日に23歳の若さで亡くなったことがわかる。左では、聖職者と思しき男性が、ブランデーをこぼしながら隣の女性のスカートの中に手を差し込んでおり、差し込まれている側の女性は陶然とした表情を浮かべている。モルの棺の上に飲み物を置く女性が、二人の睦言を忌々しそうに見つめる。モルの息子は母親の棺の下で一人遊びをして、誰もそれを見ない。あた、モルの息子も母親の死に気付いていないようであり、比喩的には息子自身の死をも暗示させる。
モルの女主人は右端で「ナンツ(ブランデー)」と書かれたジョッキを握りしめながら彼女の死を嘆いている。棺がバーカウンターのように使われる中で、この女主人だけが本気でモルの死を悲しんでいる。葬儀用「泣き女」役の年若い娼婦が、葬儀屋のハンカチを盗んでいる。別の娼婦は、鏡の前で身繕いをする友人の娼婦を手伝おうとしているが、その指には傷があり、また身繕いをする娼婦もまた、額に梅毒瘡が描かれている。壁に掛けられたシェヴロンには三つの蛇口が描かれ、アルコール、人格、そしてモルの命脈が垂れ流されてしまっていることの表象である。その傍に掛けられた白い帽子は、モルが『娼婦一代記』の最初に被っていたもので、版画がここで終わり、振り出しに戻ることを意味している。
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