作品概要
《娼婦一代記(5,モル、梅毒で死す)》は、画家のウィリアム・ホガースによって制作された作品。制作年は1732年から1732年で、大英博物館に所蔵されている。

『娼婦一代記』は、1731年に絵画として、また1732年には版画として作成されたウィリアム・ホガースの六枚組作品で、この絵はその五枚目である。
五枚目の舞台は、四角いうらぶれた部屋である。モルは今や梅毒によって瀕死の状態である。絵の左側では患者の治療方法を巡って二人の医師が言い争う。黒いカツラで肥満体の医師がドイツ人医師リチャード・ロックで、白いカツラの痩せぎすな男がジャン・ミゾバンである。ロックは瀉血を、ミゾバンはカップリング吸出し療法をそれぞれ相手のものよりも最善だと主張しあって譲らない。モルの家の大家、あるいは売春宿の女将と思しき女性が、モルの所持品を持ち去ろうと、行李箱の中を漁っている。
一方、モルのメイドは物盗りと議論とをやめさせようとしている。モルの側では、胎内で先天的に梅毒に感染したであろうモルの子供が座っていて、髪の毛からノミやシラミを取り除こうと試みる。
この館の主については一つのヒントが隠されている。壁に掛けられてハエ取りに使われているユダヤ教の過越祭り用ケーキがそれである。おそらくはかつてモルの囲い主であったユダヤ人商人が、今際の際に金銭面と住居の面倒を見たことの仄めかしと思われるが、旧約聖書のイスラエル人がやがては救済されたのとは異なり、モルの生には救いようがない表現を用いているところが、ホガース流の痛烈な皮肉となっている。
床の上には鎮痛剤用の麻薬と治療用の薬が散乱している。モルの衣服が天上の物干しから垂れ下がっているが、何やら持ち主を冥界へ誘う幽霊のように見える効果を与えてもいる。
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