作品概要
《写字台の聖パウロ》は、画家のレンブラント・ファン・レインによって制作された作品。制作年は1629年から1630年で、ゲルマン民族博物館に所蔵されている。

朝もやのような空気が立ち込める室内で男が椅子に腰掛けている。男は相当な高齢で、髪も髭も真っ白になっている。疲れきったように座るその様からも、老齢であることが伺える。男は黒いガウンのようなものの上に茶色のストールのようなものをかけ、簡単に腰紐で止めている。手前には布をかけたテーブルが置かれているが、その上には書物が乱雑に置かれ、その少し上には刀剣が抜身のままにぶら下がっている。
本作で描かれている男は初期キリスト教の理論家であったパウロである。使徒行伝によればパウロはもともとテント職人で、ローマ市民権を保持していた。エルサレムの高名なラビ、ガマリエル1世の元で学んだため、熱心なキリスト教徒であり、はじめはキリスト教徒を迫害していたという。
ダマスコの途中「サウロ、サウロ、なぜ、私を迫害するのか」とテンカラの光とともにイエスの声を聞いたパウロは目が見えなくなってしまう。その後アナニアというキリスト教徒が神のお告げによってサウロのために祈るとサウロの目から鱗のようなものが落ちて、眼が見えるようになった。こうしてサウロ、すなわちパウロはキリスト教徒となる。
パウロが記した書簡は「ローマの信徒への手紙」「コリントの信徒への手紙一」「コリントの信徒への手紙二」「ガラテヤの信徒への手紙」「フィリピの信徒への手紙」「テサロニケの信徒への手紙」などが存在する。レンブラントは写字台のパウロを描くことで、パウロのキリスト教発展への貢献を示そうとしたのであろう。
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