作品概要
《プロセルピナの誘拐》は、画家のレンブラント・ファン・レインによって制作された作品。制作年は1628年から1628年で、アイルランド国立美術館に所蔵されている。

本作で描かれているプロセルピナとは、ローマ神話に登場する春の女神、あるいは冥府の女王のことを指す。ギリシア神話ではペルセポネーに対応している。プロセルピナはユピテルとケレスの娘で、冥府に誘拐されて妻となった。母のケレスが娘がいなくなったことに気づき娘を連れ戻そうとするが、冥府でざくろの実を食べてしまったため、1年のうち半分を冥府で、残り半分を地上で過ごすことになった。
冥府の食べ物を食べたものは冥府に属するという神々の取り決めがあったからである。プロセルピナが地上に戻るとき、地上波春になり潤うようになったという。もともとローマにいた農業の女神かローマがギリシアの神々を受け入れた際にできた神であると言われている。ローマでは春をもたらす濃厚の女神とされ、リベーラと同一視されることもあった。
晴天の森のなか走る馬車ではまさにプロセルピナの誘拐が行われている。春の女神らしく華やかな刺繍の衣装をまとったプロセルピナは誘拐される恐怖におびえ、顔をひきつらせている。冥府の王プルートーは浅黒の男性の姿で描かれており、その衣も赤を基調としたエキゾチックなものとなっている。付き人である女性たちが必死にプロセルピナの衣服の裾を掴んでいるが、プルートはどこか余裕の顔で目指すべき方向を見ているようにも見える。
兵は助けを呼ぼうとするが、虚しくもプロセルピナは連れ去られてしまうのである。ローマ神話の女神でありながら、当時のオランダの流行に沿った衣服が登場人物に着せられている。プルートに東方趣味的な衣服が着せられているのは、貿易が盛んだったネーデルランドの情勢を示したものであろうか。
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2022年6月17日 10:37 pm, ID 55053