ヤコブス・ブラウの肖像

《ヤコブス・ブラウの肖像》は、フランスの画家ジャック＝ルイ・ダヴィッドにより1795年に制作された作品である。ロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

革命の時代を生きた画家

典型的な新古典主義の画家、ダヴィッドの記念碑的な作品は、おそらく伝統的歴史画の最後の勝利だったといえる。ファッショナブルなグレコ・ローマン様式を採用したダヴィッドは、こうした古風な主題を啓蒙主義の哲学と混ぜ合わせ、道徳的な模範を作り出した。

モデルについて

この肖像画には、制作年としてフランス革命暦4年（1795年）、さらにオランダ共和国のパリ全権公使であるモデルの名前と地位が記されている。ブラウ（1756-1829）は1795年にオランダのバタヴィア共和国の設立に力を貸した人物であるが、フランスのオランダ侵攻後、平和交渉するためパリに派遣された。この肖像画は、おそらくこの使命の成果を記念して描かれたものである。

描写

ダヴィッドの描いたブラウは、画家とモデルの間の共感の印象が特徴的である。その結果、直接性と誠実さが醸し出されている。公的奉仕における重大な仕事の成果は、真剣な表情の強調と、右手に羽ペンを持っていることにより示されている。灰色の背景に対して青で覆われたモデルの姿は、絵の下地にある微妙な色の調和から現れており、左側の椅子の赤は、ピンクの布と明るい青緑色のテーブルクロスにより補完されている。