アデレード・パストレ夫人の肖像

革命の時代を生きた画家

典型的な新古典主義の画家、ダヴィッドの記念碑的な作品は、おそらく伝統的歴史画の最後の勝利だったといえる。ファッショナブルなグレコ・ローマン様式を採用したダヴィッドは、こうした古風な主題を啓蒙主義の哲学と混ぜ合わせ、道徳的な模範を作り出した。

彼の直線は、当時の政治を反映した物語を劇的に描いた。ダヴィッドは当時の最高の画家として、ルイ16世の君主制、革命後の政府、およびナポレオン・ボナパルトに仕えた。これらの治世には根本的な違いがあったにも関わらず、である。ダヴィッドはまた、ドミニク・アングルやフランソワ・ジェラールといった弟子を抱えた重要なアトリエを運営した。

未完成作

革命の早い時期に、ダヴィッドは上流階級や貴族の肖像画を描き続けた。1790年にはマルキーズ・ド・オルヴィエとソルシー伯爵夫人を描いており、この時期にアデレード・パストレ夫人も描いている。彼女は上流階級にもかかわらず、華美な服装を身に着けずに、妻であり母親として示されている。当時の政治においては、家庭的な美徳が強調されることを要求しており、階級や地位を描写することは疑わしいとみなしていた。

ダヴィッドの多くの革命を描いた作品のように、この作品は完成しなかった。不完全かつ素早い筆致で描かれた背景と、夫人の手に縫い針がないことから、未完成であることがわかる。肖像画が未完の状態でとどまったのは、ダヴィッドの過熱する政治観により、パストレ夫人とダヴィッドの間に齟齬が生じたことが原因である可能性がある。