作品概要
《ヘラクレスの聖域》は、画家のアルノルト・ベックリンによって制作された作品。制作年は1884年から1884年で、ワシントン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

象徴と幻想の画家
アルノルト・ベックリンは、その特性をひとつの表現でまとめられない点で、近代画家の間では珍しい存在である。当時の他の画家が過去の古典的歴史主題を振り返り、より顕著な抽象化を試みた一方で、ベックリンは、神話的なイメージや、劇的で贅沢なものに引き寄せられ、ルネッサンス依頼の芸術の歴史に身を浸した。結果として彼の作品は、キッチュと呼ばれそうに様式的で主題的な折衷主義と、絵画的な伝統との組み合わせとなった。
描写
3人の兵士が神殿の外側で敬意を表している一方で、4人めの兵士は遠くを見ている。灰色、青、白の空は嵐が近づく予兆を示しており、木々の枝には強い風が吹きつけ、兵士のヘルメットに葉を散らしている。場面の焦点にある聖域は、磨かれた大理石で切り取られ、滑らかな円形基盤に置かれた石でできている。囲いの中には、巨大な木々の神聖な林があり、背後にはヘラクレスの像の暗い輪郭だけが見える。ヘラクレスは神秘的な英雄であり、危険からの保護者でもある。
自然を通して感情を表現
一見すると、主題は非常に現実的であり、神殿は考古学的に正確に描写されている。しかしこの場面は、謎の雰囲気を伝えている。石の純粋で豊かな調和のとれた色は、不自然な光で輝いている。森の中の暗闇は、暗い不気味な雲に匹敵している。ベックリンは19世紀前半のロマン主義に頼っていただけに、自然を見て描く絵画という考え方を拒否し、鮮やかな色や劇的な光を使うことで、自然を通して自分自身の感情を表現しようと努めた。
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