セレの風景（1922年）

スーティンの風景画が生まれた場所

スーティンは、1919年から1922年の間、セレという町に住んでいた。その町はフランスのピレネー地方にある険しい坂の多い町で、スーティンの特徴ともいえる、荒れ狂う嵐のような作風で有名な風景画のシリーズを生み出した場所である。

セレという町とスーティンの関係

商人のレオポルド・ズボロフスキーと出会ってすぐに、スーティンはピレネー山脈のふもとにあるセレという町に送られた。ズボロフスキーは、スーティンがセレの町にいる間、食費や滞在費をまかない、そのかわりにスーティンは作品を送っていた。セレは、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックやファン・グリスが休暇を過ごし、キュービズムのインスピレーションを得た場所でもある。

狂気じみた目が回るような風景

本作は絵の具が分厚く塗られていて、セレの自由広場にある、目が回るような白い壁の建物や迫ってくるような木々を表現している。スーティンが南フランスで最初に住んだ家から転居するまで、スーティンが描く風景画は、ますます苦悩に満ちて狂乱した様子を呈している。

本作《セレの風景》は、絵のような町の広場に、脅迫的な雰囲気を吹き込んでいる。建物や木々がけいれんしたような形で描かれ、カンバスの表面を押したり引っ張ったりしているかのようだ。

空がほとんど見えないくらいに建物や木々が画面いっぱいに広がり、その威圧感を助長しているのである。この情景は、当時のスーティンの心象を表していると言われている。