作品概要
《女=スプーン》は、画家のアルベルト・ジャコメッティによって制作された作品。制作年は1926年から1927年で、グッゲンハイム美術館に所蔵されている。

《女=スプーン》は、スイス出身の20世紀の彫刻家であり、画家でもあるアルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)が1926年から1927年にかけて制作した彫刻である。
モニュメンタルな彫像
アルベルト・ジャコメッティは20歳のとき、パリへ移り住み、彫刻家として身を立てようとした。古典彫刻や当時勢いのあったキュビズム、そして彫刻家コンスタンティン・ブランクーシの作品を研究した。そして、それまでお手本としていた画家である父親やスイスの画家の影響から自由になり、プリミティブなオブジェクトに関心を向けるようになった。
《女=スプーン》は、ジャコメッティの初期の彫刻のなかでもモニュメンタルな作品だ。ブロックのような頭、胸、足はキュビズムの幾何学的図形を反映しており、抽象的な造形はブランクーシの作品から想を得ている。
アフリカ彫刻の影響
アフリカのダン族が儀式に用いるスプーンに想を得て、擬人化している。スプーンの丸みを女性の子宮になぞらえている。スプーンのような大きな腹と1本の脚、そして小さな頭部をもつこの造形は、豊饒さを象徴する道具を女性の姿に重ねている。また、本作はジャコメッティの代名詞である実物と同じ大きさには作られていない。
「ジャコメッティは比喩を盛りこんで逆の発想を生んでいる。つまり、〝スプーンは女性のようだ〟から〝女性はスプーンのようだ〟と発想の転換をはかっているのだ」と美術評論家、理論家のロザリンド・クラウスは語っている。
ジャコメッティは想像力を発揮して、アフリカの彫刻をより多彩な抽象表現の造形のなかに落としこんでいる。
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