作品概要
《風景》は、画家のシャイム・スーティンによって制作された作品。制作年は1922年から1923年で、オランジェリー美術館に所蔵されている。

《家》で描かれた家との違い
《家》という作品では、カンバスの大半を建物が占めていたが、本作《風景》は、遠近法や空間の使い方を開拓することにより、スーティンの作品においてターニングポイントとなる作品となった。《家》では、建物を苦しめられているようにゆがんで描くという特徴があったが、屋根や窓がそれなりに認識することができた。
しかし本作での家は、木が生い茂る風景に囲まれ、青い空につぶされるように描かれている。この風景は、風景画として多く表現されるような平穏な景色を描くどころか、家々がゆがんだ形で描かれ、スーティン特有の力強い表現活動が表れている。
スーティンにとっての樹木の役割
スーティンはロシア帝国(現ベラルーシミンスク州)のスミラヴィチでユダヤ人家庭の11人兄弟の10番目として生まれた。子供時代に森で過ごすことが多く、その時に、樹木が様々な伝統行事で称されたことから、本作でも木の役割は保護者のような存在で描かれている。
南フランスのスーティン作品への影響
色づかいは、本作ではかなり明るくなっているが、これはスーティンが滞在していた南フランスの光に影響をうけており、家も外壁も屋根のタイルも明るい色で描かれ、カーニュの街の建物にインスピレーションを得ていたと思われる。
シャイム・スーティンは、1919年から1922年の間に、このゆがんで描く画法で200点ほどの作品を生み出したが、その多くはスーティン自身が後に破棄してしまっている。
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