作品概要
《望郷の念》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1940年から1940年で、個人蔵に所蔵されている。

最初にマグリットはこの作品に『更年期』というタイトルをつけた。いつものようにタイトルは無意味であるようだが、最終的には『望郷の念』とした。この絵が描かれた当時は1940年、ちょうど第二次世界大戦のナチスドイツがベルギーに侵攻した時期で、彼は何人かの親しい友人達とフランスに避難した頃である。
簡単に言ってしまうと愛する祖国への望郷の念を描いた情緒的な作品と言えるが、しかしマグリットである、それだけではないはずだ。翼を持っている青年が橋の上で後ろ姿を見せている。その背中には黒い翼がみられ、とても悲しい後ろ姿である。故郷を思うというのは家族を思い平和に守られていた幸せな子ども時代を思うことである。
しかし幼い頃母親が自殺をしたり父を亡くしたマグリットにとっては故郷にはあまり穏やかな思い出ではなかった。そして、反対側には、後ろに立っている青年にはまるで興味がないような面持ちのライオンが描かれている。
様々な説があるが、ある批評ではライオンは妻のジョルジェットではないかと言われている。こんなに近くにいるのにまるで違う方向を見ている二人。マグリットは心が離れてしまった妻と祖国と家族を思い、初めてタイトルに自分の感情を正直にあらわしたのではないだろうか。
そして、ホームシックなのは翼の生えた青年だけではなく、野生の中にいるべきライオンの方でもあるのではないだろうか。この作品は『シュールレアリズム風な『センチメンタル』なポエジーとでもいったもの』をマグリットが描いた作品であると自身が述べている。
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