作品概要
《失われた騎手》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1926年から1926年で、パリ、ダニエル・マランダ画廊に所蔵されている。

マックス・エルンストのコラージュやキリコの作品に大きく影響を受けたマグリットは1924年前後に新しい方向性を見出した。マグリットは人間の理性を否定するダダイズムの熱心な信望者であったが後にはベルギー派のシュールレアリズムへと移行していった。
ダダイズムは第一次世界大戦の虚無感から生じたもので、それまでの価値観を破壊し無意識の領域、作為のない偶然性などに目を向け始める動きであった。そしてその中でマグリットは現実ではありえない世界を写実的に描いて独自の世界を表現してきた。1925〜1926年には西洋けん玉をモチーフとした一連のシリーズを作成する。
その中の一つ、『失われた騎手』をマグリットは『初めてのシュールレアリズムの作品』と呼んでいる。それ以前のコラージュも十分その要素を表していた。また、1920年代マグリットは多くの劇場のセットをデザインしていた。『失われた騎士』も劇場のセットの一つで、シュールレアリズムの支持者でマグリットの弟が師事していたピアニストで作曲家のメセンズ(E.L.T. Mesens)に捧げたものとされている。
この作品では木の床の上に傘の骨のような幾何学模様の描かれた白い布が広げられている。そこを一人のジョッキーが馬で駆け抜けようとしているのだが、周りに置かれているけん玉は枝をのばしてまるで木のように見える。右端のけん玉はセットの後ろとカーテンの前に存在していてありえない世界を描いている。
マグリットは彼の支持者に同じテーマの作品を何枚か描いて与えているが、この作品も若干の変化を加えて描いたものがゴーシュで残っている。
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