作品概要
《アルンハイムの領地》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1938年から1962年で、個人蔵に所蔵されている。

マグリットはこの作品を油彩とゴーシュで残している。このタイトルでは、1938年、1948年、1949年、1962年に描かれたものが複数あるが、中でも1962年のものがよく知られている。
そしてタイトル通り、エドガー・アラン・ポーの小説、『アルンハイムの地所』のイメージで描いたとマグリットの書簡にはある。しかし小説の内容とは無関係なのがマグリットらしい。
猛禽類の頭部のような形をした岩山が他のゴツゴツした山の合間に見渡せ、その上空には三日月が輝いている。そして手前には卵の入った鳥の巣が置いてある。この3者が一直線上に存在するため見るものには卵、そして山の形の猛禽類の頭部、月へと視線と思考が素直に移動していかれる。単純で無駄をギリギリまでそぎ取ったモチーフからはマグリットの意図する非日常、不思議さがシンプルに伝わってくる。
見るものの想像力を助けてくれるような作用をしている。しかしこの三者のバランスがあまりにもよいので一瞬、ノーマルな世界ではないかと錯覚してしまいそうなほどである。
正常な世界に見え隠れする異常な世界、実は猛禽類の頭部の山も卵の入った鳥の巣も静かでシンプルな世界に共存してしまっている。計算されて置かれているそれぞれのものが何かのシンボルではないかと考えさせられてしまい、何度も繰り返し視線を走らせてしまう。それにより見る人が自ら想像力を働かせて考えなければならない、そんな作品に仕上がっている。
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